はじめまして。吉越浩一郎と申します。昨年末までトリンプという女性の下着を中心に販売している会社の日本法人で、社長として働いておりました。本来ならまだトリンプに何らかの形でかかわっていくのが普通だと思うのですが、私の場合はすっきりと完全に辞めてしまいました。 次世代のためには、去り際が肝心 格好いいとも言われるのですが、特にそんな気持ちもないのです。また、何もへそを曲げて辞めてしまったというわけでもありません。私がFX 初心者 を辞めるほうが会社のために絶対に良いと思ったからにすぎないのです。 実は日経225 はオーナー会社でして、ドイツ本社のオーナー家族内で何年か前から世代交代が始まっておりました。ということで今年3月に60才になった私の立場は “長老の大久保彦左衛門”と言えば格好いいのですが、実際には目の上のたんこぶ。平素、「仕事を任せてもらってゲームとして楽しむ」と言っている私といたしましては、今後、存在価値のない立場になっていくであろう状況に満足できないのは、お分かりになっていただけると思います。 また、本社の若いオーナーにとりましても、私がいることで自分たちのやりたいことがスピードを持ってできないということにでもなれば、何かの折に結果が出なかった場合は、まずは思うようにさせてもらえなかったことを第一の理由にしてしまう、そんな気持ちになってしまうと思うのです。ですから、私がそうさせてもらったように、彼らが思う存分仕事ができて、万が一うまくいかなかった時にはその間違いから自分で習って育っていく、そういった形が一番自然であると決心して、すっきり会社を辞めた次第です。 20年以上も働いてきた会社に未練がないかというと、そんなことはありません。でも、私の決断は正しかったと確信したいですし、これから、トリンプという会社がますます発展していくことを心より祈っております。 社長時代より忙しいのが悩み 個人的にも、今では会社を辞めて本当に良かったと思っております。と言いますのは、先物取引 を辞めて全く何もしないというのでは、俗に“荷下ろし現象”と申しまして、人間は突然することがなくなり目的を失うとストレスにより身体を壊してしまうのです。私の場合も突然会社を辞めてしまったので、その後どうなるやら皆目見当がつきませんでした。それが会社を辞めて吉越事務所なるものを立ち上げましたところ、講演を中心に色々な形で仕事が舞い込んできて、むしろ社長時代よりも忙しくなってしまい、今では逆にその忙しさが悩みになっているところです。人間の悩みとは誠に勝手なものです。
とは言ってもどんな仕事でも楽しいもので、なかなか減らすというのは難しいのです。ただこのまま走り回っていると忙しさからくる逆のストレスで身が持たないと思い、色々と方策を考えてみたのですが、効果的に仕事を減らす適切な方法は見つかりません。結局は講演料を値上げすることとし、今はちょうどその値上げに取り組んでいるところです。今のところ、仕事の多くは講演ですので、できましたら講演者としての高級ブランド(?)としてのイメージを作り上げていく一方で、仕事が少しずつなくなっていく、そんなことができたらいいなと勝手に考えています。ある程度の値上げで仕事の依頼がなくなってくれば、それだけの内容の講演であったのであろうと、またそれはそれで、あきらめもつきます。そして忙しい社長時代から完全な引退生活に入るまでのソフトランディングと位置づけているこの何年間かをより有意義に、それこそ格好良く過ごすことができると思うのです。 明るく元気なマネジメント術 色々な機関から声をかけていただいて、講演で多くの知らない方に、会社ではこういったことをこういった目的でしてきました、また、それはこういった考え方に基づいています等々お話いたしますと大変喜んでいただけますし、またその熱気が伝わってきます。ですから今後も講演活動をしていくつもりですが、やはり時間や回数等、それには自ずと限度があります。また多くの方から吉越塾みたいなものを開かないかとのお誘いを受けたりしております。例えば会議の仕方であるとか、デッドラインの引き方であるとかといった会社の効率を上げていく手法を徹底して教え込んでいって欲しいといった話です。でもこれを本格的に立ち上げようとすると、それこそ時間的に相当な無理がでてまいります。 ここまで書けばこのコラムで私が何をしていこうかということが分かっていただけるのではないかと思います。文章を通してですからそれなりの限度もあるとは思いますが、最大限努力していきたいと思います。というわけで今回この NIKKEI NET BizPlus にコラムを書いてもらいたいという要請を受けました時に、素直にうれしく思った次第です。以前に出した本もすでに1年半から2年も経ちましたので、内容的にも相当追加しなければいけないことが出てきております。会社や社員を元気にする、私なりの時間や業務、人、組織等のマネジメントの方法、考え方について、具体的かつ実践的にお伝えしていきたいと思います。 とは言え、やはり講演は講演でそれなりに先物取引 があるものですから、チャンスがありましたら、私の得意にしている、明るく、元気のでる講演をぜひ聞きに来てくださるのをお待ちしております。では、これからどうぞよろしくお願いいたします。
昔から「働き過ぎ」と言われる日本人の年間実労働時間は、1990年代以降1人当たり平均2,000時間を割り、2005年には1,775時間にまで減少しました(OECDによる就業者全体の国際比較データに基づく)。 IT化でも改善しない長時間労働の実態 数字だけ見ると、かなり短縮されたように思われるかもしれませんが、実態は違います。仕事の効率化を積極的に進めてもたらされた結果というより、バブル経済崩壊後、長く続いた景気低迷で、単に「仕事が減ったから働く時間も減った」という消極的な理由による部分が実は大きいのではないかと私は考えています。さらにこの1,775時間という数字にしても、ヨーロッパの先進国と比較するとまだまだ「働き過ぎ」の水準にあり、実感として日本人の労働時間の長さは、さほど変化していないのが現状です。現に最近発表されたデータでも、週に50時間以上労働している就業者の比率は、諸外国に比べ日本だけ突出して高くなっています。 ところで現在のビジネス社会では、あらゆる局面でスピードが要求されます。これに呼応するように、職場環境におけるIT化の浸透や携帯電話、電子メール等、多様な通信手段が普及しています。こうしてビジネスマンが効率よく、スピーディーに仕事を進められるインフラは急速に整っているのに、なぜ労働時間の長さは変わらないのか。なぜ残業は減らないのか。答えは簡単、会社の経営者も社員も、「残業は当たり前」という固定観念から脱却できずに、真剣に残業をなくそうとしていないからです。では残業をなくさないと何が問題なのでしょうか。 常態化した残業が問題点を覆い隠す 私は、仕事を「フェアなルールに基づいて進めるゲーム」ととらえています。残業の最も大きな罪は、まさにこの公正さをあいまいにするという点にあります。つまり、残業が常態化してしまっている会社では、本来就業時間内に発揮すべきその会社やこれを構成する個々の社員の能力レベルや基準がいつまでたっても不鮮明なままで、改善・修復すべき問題点が見出せないのです。問題点が顕在化してこない会社に成長はありえません。 にもかかわらず経営者は残業をなくそうとしていません。その理由の1つは、いまだに「遅くまで毎日残業するのは、会社への忠誠心の表れで“善きこと”」と評価しているからですし、2つ目の理由は、残業をなくせば、現状残業で賄っている仕事をカバーするために、新たな人材を雇用する必要があり、そのためのコスト増が発生するのを恐れているからでしょう。 確かに一時的なコストアップは避けられないかもしれませんが、「就業時間内の社員の集中力を高めることができれば、効率が上がり十分回収できるどころか、従来以上の価値を生み出す投資になる」とポジティブに考えていただきたいのです。
実行はトップのリーダーシップ次第 さらにもうひとつの理由があるとすると、残業代が生活給の一部になっている社員からの反発をその理由に掲げて、「だから絶対『残業ゼロ』なんて無理」とやる前からトップがあきらめてしまっていること。これが一番問題です。したがって、私の経験から、定時になったらオフィスの蛍光灯を消して回るなど、トップが先頭に立って実行しない限り、「残業ゼロ」は絶対達成できません。やる前から匙を投げるなんて論外です。逆にトップが強い信念でやり続ければ、「残業ゼロ」は必ず実現できるのです。 まず週のうち、1日を「ノー残業デー」に決め、徹底的に順守する。例外を認めたらキリがありません。有無を言わさずに、が肝心です。それでも、どうしても残業しなければならない場合は事前申請で許可する代わりに、「なぜ残業しなければならなかったか」をその部署で徹底的に見つめ直し、完璧な再発防止策を作成してもらうために、反省会を何度も開いてもらいます。こうして週1日の「ノー残業デー」が定着してきたら、違う曜日をもう1日増やします。同じように徹底できるようになったら、順次日数を増やし、最終的には毎日を「ノー残業デー」にします。 言葉で言うのは簡単ですが、実行にはかなり高いハードルがあります。あせらず、3年から5年のスパンで、「ノー残業デー」を週1日から毎日へと拡大していくことも可能ですし、衣料品小売り大手の「しまむら」のように、即“毎日午後7時で全員帰宅”とすることも可能です。これは、そのマネージメントの考え方によると思います。 目先の困難を補って余りある、残業ゼロの効用 個々の社員も残業をなくす意義を理解し、行動する必要があります。そもそも会社のためだからとサービス残業でさえ黙って受け入れる人種は、世界でも日本人だけなのではないでしょうか。周りが仕事をしていると帰りにくいという日本人独特の感覚も弊害になっているのかも知れません。日本人の勤勉さは世界に誇れることだと思いますが、その勤勉さとは、効率を考えずに長時間働くことでは決してありません。 昨今日本でもようやく「ワークライフバランス」、すなわち仕事と私生活の両立が重視される傾向になってきました。残業は会社にとっていいことと、無意識のうちに思い込んでしまっているとしたら、今こそ認識を改めるべきです。「残業がない」という前提に立てば、自然に限られた時間内でどれだけ多くの仕事をこなせるか、という効率重視のやり方に変わっていくはずです。ある女性の話ですが、彼女はどうしても残業ができない日は、朝出社したら、机に「ノー残業デー」の旗を立てるのだそうです。その日は昼間、いつも以上に集中して仕事をする。このように会社に制度がなくとも、周りに文句を言わせない工夫は、その気さえあれば誰もができるのではないでしょうか。